Report
2026.02.10

【レポート】舞台映像上映 Reライブシアター/都城市総合文化ホール 大ホール(宮崎県)

2025年10月25日(土)、高画質舞台公演映像を劇場空間で上映する「舞台映像上映 Reライブシアター」が、宮崎県都城市総合文化ホール大ホールで開催された。
 
EPADでは、時間や空間を越えて舞台芸術をもっと身近に、気軽に楽しんでもらうべく、舞台公演映像の高画質上映会に継続して取り組んでいる。上映会「Reライブシアター」は今年度から全国10館で上映会を行なっており、この都城市の上映会は4番目の上映となる。
 
この日上映されたのは2作品。【ラインナップはこちら
どちらも高画質で収録された定点映像を、ホール舞台上のスクリーンに等身大に近いサイズで上映した。
PARCO PRODUCE2024『リア王』はチケット代1000円(税込)、蜷川幸雄七回忌追悼公演『ムサシ』は無料となる。
 
会場は自由席で、等身大に近いサイズの定点映像による臨場感をより味わうことができる座席の推奨範囲がホール側から示されている。
この日の一本目、13時からのPARCO PRODUCE2024『リア王』の上映10分前の時点でその範囲の6〜7割は埋まっていた。
客層は老若男女様々で、連れ立っての来場も多い印象があり、開場前には演劇の話に花を咲かせる声もよく聞こえた。
 

 

 
「PARCO PRODUCE2024『リア王』」はショーン・ホームズ演出、段田安則がブリテン王リアを演じる。彼らが2022年の『セールスマンの死』以来のタッグを組み、シェイクスピアの四大悲劇に挑んだ。
上映映像は2024年東京芸術劇場プレイハウスで収録したものとなる。
 
幕が開くと目に映るのはウォーターサーバーやコピー機が置かれた、蛍光灯の強い白色の光に包まれた無機質なセット。登場人物たちはオフィスカジュアル、あるいはファーストレディ的な服装に身を包んでいる。
舞台上の光景は現代的ながら、登場人物たちのせりふや展開される物語は戯曲に忠実。そのコントラストが、人間の本質や数奇な運命を描く原作の持つ強度が時代を越えるものであることをより強く感じさせる。
 
狂える王を見事に演じきった主演の段田をはじめ、親子関係を中心に醜さも美しさも含んだ様々な感情を表出した俳優たちの熱演に魅入られる。また各俳優の見せ場だけでなく、せりふを発する人物の後ろに一列で並ぶ俳優たちの微細な表情や身振りも、観客の緊張感と集中を持続させる。こうした奥行きのある演出も、高画質等身大映像で、集中が途切れることなく自然に視線を向けることができた。
一幕後半からリアたちは王城を出て荒野をさまよう。白から黒、秩序から混沌へ様変わりした舞台の全景も、立体感を損なわないまま観客に届けられた。
 
音響においては、俳優たちの発声にくわえ、ノイズや雷鳴、重低音など、リアたちの悲劇的な運命を観客に理解させるさまざまな音響効果が、この上映においても再現されていた。
推奨範囲内の前方の席で鑑賞していると、ホール内に響く残響音によって「この場で発話されている」という錯覚に陥った。
劇場空間での上映会ならではの特殊な臨場感といえるだろう。
 
上映が終わると、映像内のカーテンコールと同じタイミングでホールの観客から大きな拍手が贈られた。
 

 

 
来場者のアンケートでは、映像や音響についてさまざまな感想が寄せられた。高画質の等身大映像や立体的な音響に「映像とは思えない」「実際の舞台を観ているようだった」「音に迫力があった」という驚きと興奮の声があり、いっぽうで「暗い、ぼやけている」「せりふが聞き取りづらい」という回答も見受けられた。
 
また、両作品の内容に言及した感想や、「もう少し勉強しておくべきだった」「現代劇も観たい」などの回答からは、作品選択の重要性や、内容に関連した事前知識・レクチャーなどの可能性も感じさせる。
「(この上映会の存在を)知らない人が多かった。もっと多くの人に知られてほしい」と、上映会の周知の必要性を伝える回答も寄せられた。
 
舞台芸術の鑑賞機会に触れた感想も多く集まった。「この地方にいると舞台を観る機会がなかなかないので良かった」という肯定的な回答とともに「初めて長時間の舞台を観た」という回答も複数あり、今回の上映会が、訪れた人にとって舞台鑑賞体験として受け止められた様子がうかがえた。
また過去の実際の鑑賞体験と今回の上映会を比較した回答も見られ、この上映会が舞台作品を初めて観る機会になっただけでなく、様々な理由で舞台芸術鑑賞の機会から遠ざかっていた人たちにとっても再び劇場空間に集まる機会になったことも読み取れる。
 
鑑賞のための様々なハードルを越え、舞台芸術の感動を伝える高画質定点映像。各地での上映会により、舞台芸術はもっと身近になっていく。実践を重ねた先に見えてくる未来にも引き続き期待したい。
 

 

 
取材・文:北原美那
写真:黒木朋子