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コロナ禍をきっかけに舞台芸術業界全体が舞台芸術作品を映像として残すこと、そして媒体を使った配信への関心を高めています。また、劇場での観劇の代替としてだけでなく、高画質・高音質にARやVRなど技術の向上によって、劇場へ足を運ぶのとは違った楽しみ方も生まれてきています。EPADでは、そういった最新技術にも目を向けつつ、既存の映像作品の新しい楽しみ方を提案していけたらと考えています。
舞台芸術作品において、作り手にも観客にも愛されている要素として音楽がありますが、その扱われ方は団体・作品によって多様です。今回は『聴く』をテーマに、音楽劇を取り上げます。2021年度に国際交流基金とEPADが協働したSTAGE BEYOND BORDERSでも紹介したFUKAIPRODUCE羽衣の『スモール アニマル キッス キッス』(2020年)の楽曲のコード譜を、その制作過程とともご覧いただきます。作曲家・演出家のデモ音源とコード譜を元に、楽器を演奏し、作品世界に飛び込むという鑑賞体験をしてみてはいかがでしょうか?
FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』
上演年:2020年
作・演出:糸井幸之介
音楽:糸井幸之介
紹介楽曲
まずは、1曲目の「ハナレバナレノアダムトイブ」より、コード譜と該当箇所の映像、そして作・演出・音楽の糸井幸之介さんのデモ音源をお聴きください。※コード譜は上演時のKeyに合っており、デモ音源とは異なっています。
※該当部分より再生
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FUKAIPRODUCE羽衣では脚本・演出・音楽を糸井さんが担います。曲と詞のどちらが先にできるかは作品ごとに異なります。コード進行と旋律が糸井さんの手元で出来上がり、そしてそれを俳優たちは稽古場で耳で聴いて覚えます。『スモール アニマル キッス キッス』は、糸井さんがギターを弾きながら歌っているデモ音源を併せてご紹介します。ぜひ聴き比べてみてください。
※該当部分より再生
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上演では聴くことのできないデモ音源は、音源としても貴重ですし、作品の始まりを感じさせる素朴でプリミティブな魅力が詰まっています。
舞台芸術は上演にフォーカスして作品が作られることが多く、映像化を想定していないケースがあります。観劇体験からの欠損があることも多々あります。映像を鑑賞するにあたって、今回のように作品のある要素に特化して、映像に補完するような創作過程やコンテンツを公開することで、新しい味わいを楽しんでいただけるかもしれません。FUKAIPRODUCE羽衣の公演では、劇中曲の歌詞カードが配布されることがあります。上演台本やサウンドトラックと合わせて、お楽しみいただければと思います。
※該当部分より再生
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素材提供:FUKAIPRODUCE羽衣
舞台写真:金子愛帆