LOVE
2021.04.17
唐津絵理(愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサー/Dance Base Yokohamaアーティスティックディレクター)/BATIK『ラストパイ』
舞台左前に照らし出されるスポットライト、後方の高みから微かに聴こえてくるギターのリズム、上半身裸の男性が暗闇の中から浮かび上がる。黙々と動き続けているこの男性こそ、Nosim芸術監督の金森穣である。Noismが外部委嘱した本作は、ダンスに身を捧げることを厭わない黒田育世の過酷な振付に、金森のストイックで真摯な精神性が相まって残酷かつスリリング、かつ圧倒的なパフォーマンスで話題をよんだ。終始等身大円の中で踊り続ける金森の後方空間を行き来するアンサンブルは、Noism初期メンバー。金森とギタリストの松本じろの間を何度も往復しながら舞台空間に軌跡を描いていく彼らの姿は、坦々と動きを繰り返す金森のダンスと相まって人生の往来や生死の循環を想起させる。俊英ダンサーたちのエネルギッシュな肉体を生かした本作は舞踊の根源に迫る傑作となった。その後、愛知県芸術劇場、アーキタンツなどでワークショップ公演を行い、2018年にはDance New Airでもキャストを変えて上演されている。
分野:舞踊
推薦者:唐津絵理(愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサー/Dance Base Yokohamaアーティスティックディレクター)
作品名:BATIK『ラストパイ』
撮影:東浦一夫 Noism05