LOVE
2021.04.17
荒木伸二(映画監督)/城山羊の会『相談者たち』
「トロワグロ」をスズナリで見て「わ、山内さん、すごいの書いた、頂点達しちゃったかも」と私は思いました。居合わせた誰もが思ったはずです。一幕一場もの。時間も空間もジャンプしない演劇の中の演劇。本格派。精度を極めた構成、台詞、演出。案の定「トロワグロ」は岸田戯曲賞を獲りました。それから何作か後に発表されたこの「相談者たち」は「トロワグロ」以来の一幕一場もの。晴れやかな夜会に集まる者たちを描く「トロワグロ」とは対照的に集まるはずのない集まってはならない者たちの一夜を描きます。一見「トロワグロ」のちょっと大人しい妹みたいな作品でした。でも孕んでいる狂気や絶望は「相談者たち」の方が随分と激しく、とてつもなく静かでとてつもなく不穏な時間の流れが体に染みつきます。愛してやまない一本です。
分野:演劇
推薦者:荒木 伸二(映画監督)
作品名:城山羊の会『相談者たち』