【レポート公開】EPAD×東京芸術祭 2023 ファーム共同企画/小林春世
★EPAD×東京芸術祭 2023 ファーム共同企画とは
東京芸術祭ファームとは東京芸術祭の人材育成と教育普及を目的に2021年にスタートしました。今回、ファームに参加している方々より公募によって協力者を募り、「EPAD Re LIVE THEATER in Tokyo」のレビューやレポートを書いて頂きました。ここではその中よりいくつかご紹介させて頂きます。
★「EPAD Re LIVE THEATER in Tokyo~時を越える舞台映像の世界~」概要
https://epad.jp/news/32138/
EPAD×東京芸術祭 2023 ファーム共同企画/小林春世
「映像での観劇」自体は、これまでに何度も経験してきたので、それらとEPAD Re LIVE THEATERの何が違うのかという点に1番興味を持ちながら、今回伺いました。
終演後、最初に思ったのは、これまでの経験の中で最も「生の演劇」に近いということです。それには、いくつかの理由があります。
まず、劇場で観られることに大きな意味があると感じました。映像とはいえ、劇場の座席で観ることにより、映画館や自宅とは全く異なる体験となったからです。それは、観客が、例えば映画館で観る時とは違って小さな音も立てないなど、劇場で観劇する時特有の、一種の緊張感を持って観賞していたことが1番の理由だと思います。また、途中入退場などもほとんどありませんでした。それによって、まるで生の演劇を観ている時のように、目の前の作品に集中することができました。
また、寄りの映像がないという点も、生の演劇に近いと感じた理由の1つでした。劇場での観劇には、ある意味「不自由」な部分があります。例えば、同じ公演を観ていても、座席の位置によっては俳優の表情は全くわかりませんし、前の席の人の座高によっては、舞台上に観づらいエリアができてしまいます。今回、寄りがないことで、それと同じことがきちんと起きていました。同時に、寄りの映像だと失われてしまう自由さも、確保されていました。演劇は、その瞬間に喋っている人を観なければいけないわけではなくて、舞台上のどこを観ても自由ですし、楽しめるものだと思います。しかし、その瞬間、演出上大事な人がアップにされている映像だと、その人を観ることしかできず、それは生の演劇とは違うと、これまで思って来ました。そのストレスがなかったこともとても良くて、生の演劇体験に近いと感じました。
コロナ禍を経て、映像で観劇することは普通になって来ていますが、EPAD Re LIVE THEATERを経験するまで、その何が特別なのか、私はあまり想像できていませんでした。しかし、このように1度でも実際に体験すると、他のものとは全然違う魅力があることがわかったので、まずは1度、多くの方に経験していただきたいです。
また、私は俳優なのですが、同業の先輩方から、20年以上前の「伝説の公演」のようなものの話を聞くことがよくあります。その度に、過去に戻れるものなら観てみたい…!と強く思います。未来の若い俳優たちは、EPADによって、そのようなものが観ることが可能になるのだなとも感じ、この演劇図書館がこれからもずっと続くよう、心から願っています。